テザーの実験―宇宙エレベーター特別教室(15)

宇宙エレベーターで現在有力なテープ型テザーは2009年に日・欧・米・豪の国際プロジェクトT-Rex計画で伸ばした136メートルが宇宙最長記録であることはご紹介したとおりです。

次のグラフは、横軸に西暦年を、縦軸に宇宙で伸ばすことのできた長さを示したものです。
日本、米国、欧州の宇宙実験の記録が載せてあります。
この傾向から外挿すると、10万キロメートル(100,000,000メートル)が達成されるのは2040年ごろ、ということになるでしょう。

テープ型テザー伸張実験結果


ちなみに、宇宙テザーは1966年にジェミニ11号とジェミニ12号が伸ばした36メートルのテザーから始まりました。

自動車の安全ベルトのようなテープ・テザーを伸ばし、すでにおなじみだと思いますが地球の方にひもが引っ張られる重力傾度、そして、ひもにつないでくるくるとスピンさせて人工重力を作るという二つの宇宙実験を行いました。

いずれも搭乗していた宇宙飛行士が手伝ったのでテープ・テザーを伸ばすことができて、実験は成功しています。

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テザーが切れた場合のシミュレーション-宇宙エレベーター特別教室(14)

図は、オーストリアのポール・ウイリアム博士が、一部で宇宙エレベーターのテザーが切れたあとのテザー運動を数値シミュレーションしたものです。
 真中にある円が地球を示しています。

テザーが切れたあとのテザーの運動

 切断したところより上の部分は、徐々に地球から遠方に漂って行き、下の方の部分は地球に巻きついてゆく様子がおわかりいただけるかと思います。

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テザーの運動シミュレーション-宇宙エレベーター特別教室(13)

 宇宙エレベーターの長さは、CNTの長さのミリメートル単位で表すと10兆(テラ)ミリメートル(10,000,000,000,000mm=10*E13ミリメートル)にもなります。
 これほどの大きな数になると、成立性が疑われるとする学者もいます。

 また、これだけの長さになると、太陽発電衛星などのいわゆる大型宇宙構造物の数10キロメートルオーダーの大きさをはるかに超えるため、その運動は非常に複雑なものとなると考えられます。

 まず、カウンターウエイトのない長さ144,630キロメートルのテザーが直線を保ったまま地表を支点として赤道面内で振り子のような運動をすると考えましょう。このとき一度振れて元に戻るまでの時間、周期、は189時間かかります。
 すなわち約1週間以上で一振れする非常にゆっくりした運動になります。

 もちろんテザーはひもですから、部分ごとに小さな振動から大きな振動まで、色々な周期での運動をします。

 図は、このときの横軸に高度をとり、縦軸に横方向の振れ(変位)をとって、約30時間(100,000秒)ごとに変化する様子を示した数値シミュレーションの例です。

テザーの運動シミュレーション

 地上に固定された根元部分や、カウンターウエイトのついていない先端が複雑な運動をすることが分かります。
これを「尻尾を地上にくくりつけられた龍のよう」だと表現した人もいます。

 テザーが大きく暴れた時の制御方法と、地上のポート部分が固定できるのかなどは今後研究しなくてはならない課題であることがおわかりいただけるかと思います。

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ライダー上昇時の宇宙エレベーター全体の運動シミュレーション-宇宙エレベーター特別教室(12)

 ライダーの運動での問題点の一つは、ライダーがテザーを上昇下降するときまっすぐ上下方向に動かずテザーの鉛直方向から大きくずれてゆくことです。

 図は赤い点で表したライダーが4万キロメートルの柔軟なテザーを上昇して行くときの宇宙エレベーターシステム全体の運動を数値シミュレーションしたものです。
 横方向の距離を拡大してありますがテザーが大きく横方向に運動することが分かります。

宇宙エレベーターシステム全体の運動

 これは「コリオリ力」(コリオリの力)によるものです。
 宇宙エレベーターは24時間で一回転するように回転しています。このためまっすぐ上下に運動しようとすると宇宙エレベーターからずれてゆくのです。
 速度に比例して横方向に働く力でコリオリ力が働くためです。

 つまり、回転している非常に長くて柔らかいひもと、その上をひもに沿って運動する物体とが互いに干渉する非常に複雑な現象となります。

 このような現象を上手に制御して避けるなどの対策が必要になるので、ライダーについてはその駆動機構も含めて、益々の研究が望まれます。

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楕円の軌道に働く力-宇宙エレベーター特別教室(11)

地球は完全な球形でなく、赤道面が膨らんでいるのに対して地球の北極と南極で輪切りにしたとき、上下に僅かに平べったく、極点は赤道よりもほぼ21km地球中心に近い。ちょうど西洋ナシのような形をしていると言われます。

さらに、地球を赤道面で輪切りにすると楕円形をしています。実際には衛星の位置をずらすように働くように色々な外乱が加わっていますが、そのうち主な要因は地球の赤道面が楕円であるために生じています。

地球の赤道面は大体西経11.5度と東経161.9度の方向に長軸を持ち円から65mずれているような楕円です。
ほんの僅かと思われますがこのため、図に示すように静止衛星軌道上で衛星には地球断面の長軸の方向に引っ張るような力が働いて、軌道上に加速することになります。

楕円軌道に働く力

軌道上に引っ張る力が働いて、軌道速度が増えると、ケプラーの法則によって軌道の周期が長くなります。
周期が長くなるということは力が働いて加速するのと逆の方向に軌道がずれるということなので、引っ張る力と逆の方向に軌道がずれることとなります。
この逆も真ですので、軌道は図の力がかかる方向と逆の方向にずれようとします。

この引っ張る力の大きさは、静止衛星の地球上の経度位置に依存します。
そして、図の西経11.5度,105.3度、東経75.1度、そして161.9度の位置ではこのような力が釣り合っています。

このうち地球の長軸の方向西経11.5度と東経161.9度の近くでは軌道はずらす方向に働くので静止衛星は離れてゆくこととなります。
一方、短軸の方向東経75.1度と西経105.3度の位置の場合、軌道のずれは静止衛星の位置を元に戻すように働きます。このためこの位置は静止衛星が離れてゆかない安定な平衡点であることが分かります。

したがって、静止衛星はこのような外乱に対して推力を用いて、高度だけでなく東西方向にも軌道を保持していますが、推薬がなくなると、すなわち、寿命が終わるとこのような外乱によって徐々に東経75.1度と西経105.3度の位置に集まってゆきます。

これが静止衛星の墓場となります。
日本上空(東経135度)に挙げた静止衛星は軌道保持のための推薬が無くなればインド上空(東経75.1度)に徐々に動いてゆくことになります。
だから、メキシコやアメリカ(西経105.3度)とインド上空は軌道保持のための推薬が節約出来るけれども、他の用済みの静止衛星も集まってくるところとなる面白い場所でもあります。

宇宙エレベーターの建設位置として考えると、もっとも自然にとどまってくれる建設地はこの2点ということになります。

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